Frankfurt生活3週目

<23日(月)>

ドイツではテレビの受信料は強制だ。GEZと言うのだけど,銀行ならどこでも払えるらしい。そういうことは早めにやってしまえと思って,銀行に行ってみた。すると,銀行口座からの引き落としになると言われて,それはないのでキャッシュで払えるのか聞いてみると,結構なコミッションがかかるということだった。そこで…口座ならCitiにあるではないかということで,Citi銀行に行ってみた。

ここから引き落とせるのかと聞いてみると,大丈夫とのこと。そこで,フォームに書き込んで,カードを出してアカウントを書いていると,さっきの窓口の人がやってきて,「ドイツのアカウントじゃなきゃだめだよ」とのこと。キャッシュではどうかと聞くと,請求書が来てからだという。公明正大に受信料を支払う目論見は,ここで潰えた。残念。集金人がやってくるか,請求書が舞い込むのを待つことにしよう。あるいは,こっちで口座を作るか…。ちょっと考えよ。

そういえば秘策がある。こっちの人の口座を借りて,料金を渡してしまえばそれでいいはず。しかしなぁ。そんな相手はおらんなぁ。

夕方,かみさんがやってきた。その後,買い物をしたり,夕食を食べたり,新しく増えた荷物の整理をしたりで(すでにいい加減に片付けられていたいろんなものが,見栄えよく整理されなおされるということにもなった。ありがちですねぇ。),あまり仕事ははかどらず。かみさんを待っている間に読んだ本は面白かった。そのうちエッセイにでも載せるかな。

花の散った桜
満開だった桜も,今や花の形跡もない
すぐ時間が経つ


GEZの申請書
GEZの申請用紙
ドイツの銀行アカウントが必要
バーンカード
BDの50%割引カード(BahnCard50)


Alte Operの夜景Alte Operの夜景
<24日(火)>

ドイツ鉄道(DB)で,バーンカード50を購入。バーンカードには25,50,100とあって,数字は料金の何パーセント割引になるかを表している。100ってのは,もちろん100%割引。そのかわり30万ぐらいする。僕らは3万円ぐらいの50のカードを購入。パートナーは,半額になるので,1.5人分で2枚。これで,DBでの旅行はずっと半額。一緒に,週末に行くミュンヘン,5月に行くライプツィヒのチケットも購入した。

AlteOperであった,フランス放送交響楽団の演奏会。イタリアのハロルド(ベルリオーズ)が1曲目。ビオラでソリストを呼んでいた。この曲,緩急が入り乱れて,緩の部分はゆっくり歌うようにできている。ビオラソロが実はそこばかり。ソリストに期待する技巧を見せる曲ではない。それにしても…最終楽章で弾かないところでビオラを床に置かないでよ。笑えて困った。

後半はフランス物。ペレアスとメリザンド(フォーレ),ダフニスとクロエ(ラベル)。どちらもさすが,ものすごく雰囲気のある良い演奏。ピッチカートの揃わなさがまた,フランスのオケらしい。そして,アンコールがあった。ラベルの最後の方の再放送と,ビゼーのカルメン。そういえば,ビゼーもフランスの作曲家だった。


<25日(水)>

朝からフライト予約の件でANAのヨーロッパセンターに電話。これがロンドンにあるので,ちょっと携帯ではかけたくない。で,小銭をたくさんもって公衆電話から。

午後からDipfに。その前に,携帯電話の料金継ぎ足しカードをAldiで購入。Aldiというのは,こちらの安売りショップ。この店ができてから,Pennyとかの安売りショップもできはじめたらしい。カードを買って裏のシールをコインではがすと16桁の番号が入っている。カードに書かれている番号に電話して,その番号を入れる。しかし,反応がない。またわからん。

Dipfに行って再びヘルプを求める。すると,カードにも書かれていない内緒のキーがあった。「#」を最後におさなければならないらしい。それは常識か?書いといてよ。この前のもそれが原因だったようだ。とりあえず,これで携帯も復活。

Dipfでは,Broechle女史の師匠の話になった。認知心理学や学習科学の領域だという。日本の教育状況について説明。しかし,この説明,つい皮肉がまじる。どうも胸を張って説明できない状況が日本で動いているように感じるからだ。


<26日(木)>

ずっと引きずってた翻訳の担当章が終了。アップロードした。この章,教育改革に関するこの本の全体の締めくくりで,どうすれば実験的改革が広範囲に普及するかという話。内容的にはよくわかるけど,モデル事例として中国や日本などのアジアをあげている。そこで言われていることは,大人数クラスで教えることで,授業以外の時間を産み出して,授業研究や教材開発を行っているということなのだ。これは,この筆者の話ではなく,別の研究者の報告からの引用。しかし,今の実態を考えると,とても信じがたい話だ。もっとも,この本が書かれたのは10年前。ここで引用されているSizerの報告書はさらに10年前。1984年ごろの学校は,確かに授業研究がしっかりできたように思う。今,とてもそんなわけにはいかない。

私見だがこれは,よく言われるように,「ゆとり教育によって時数が減って,その分教員が詰め込み授業をせざるを得なくなった」ということから来るのではない。教師の仕事に降ってきたさまざまな書類の義務,学校で発生する理不尽な問題の解決などによる。さらに,土日,夏休みなどに休んでいるように見える教師の生活に対するジャーナリスティックなバッシングによって,ずっと働いている証拠を見せざるを得なくなった事による,自由な研修機会の剥奪。それに,今給与格差による競争が導入されようとしている。この日本の教育の姿はお手本にならないだろう。


<27日(金)>

朝Frankfurtをたって,Munichに来た。どうも見本市と重なったらしく,ホテルをとるのが大変だった上に,とれたホテル(King's Hotel)もずいぶん高め。ドイツのホテルは,イベントがあると値段が跳ね上がる。まあでも,それで普段のレートが低いのだから,ありがたいと言えばそうなんだけど。逆に賢く動くことができれば安くつく。

この前来たのは2005年の春。2年ぶり。なんだか懐かしい。夕方は,ヘラクレスザールで,バイエルン放送交響楽団の演奏会。実はチケットがとれているかどうか怪しかったので(メールが来ないのですよ),早めに行ってみた。すると,チケットオフィスは開演1時間前しか開かないとのこと。昼にピザを食べて,マルクト広場を散策。季節の野菜,アスパラガスもそこら中で売っている。賑やかだ。

ヘラクレスザールの入り口…というかレジデンツの入り口あたりは,オデオンス・プラッツという。ここには,3〜40段の階段があって,そこにいつも人が座っている。その両側にはライオンの像がある。ライオンは,バイエルン州の象徴だそうだけど,ここで逸話が。仙台のS原先生に,狛犬,シーサー,それにヨーロッパの2匹のライオンの意匠は,みんな中国伝来だという話を聞いた。狛犬の片方は獅子だったのはご存じ?…というわけで記念写真。

チケットオフィスでは,案の定,予約が取れていなかった。「お取り置き」まで手続きはしたはずなのだが。それでも,リーズナブルな席が空いていたので,2席購入。その後,レジデンツの庭にあるカフェで食事をとった。このカフェ,レジデンツに来る度に一度は行こうと思っていた所なのだけど,ようやく座れた…っていうほど難関なわけではなく,ただ,機会に恵まれなかっただけ。コンサートが始まるまでの約1時間,のんびりできた。

King'sホテルの部屋
King'sホテルの部屋。
大げさにも天蓋がついている。あんまり意味ない。
まあでも,ホテルとしては結構いい。


屋台のアスパラガス屋
この時期の名物
アスパラガスを売っている


オデオンス・プラッツのライオン
Odeons Platzには2匹のライオンの像がある。
レジデンツのカフェ
レジデンツのカフェ


鶏のバローロ煮
鶏のバローロ煮
野菜の焼いたの
焼き野菜のドレッシングかけ
久しぶりの大量野菜


カフェの灯り
カフェの灯り
台に花が飾ってある
ヘラクレスザール
ヘラクレスザール
レジデンツの中の広間(多分昔は舞踏会ホール)


壁の絵はヘラクレス
壁には地球を支えるヘラクレスの絵

コンサートが始まった。でも,チューニングの前に指揮者のヤンソンスが出てきて,「楽団の偉大な友人が昨晩亡くなりました。黙祷をお願いします。」という。全員で黙祷…ロストロポービッチが亡くなった。

自分で選んだ2枚目のクラシックレコードが,ロストロポービッチのドボルザークだった。高校の時だ。完璧な演奏。これを超えるものは聴いたことがない。2005年の5月に阪神大震災10周年の1000人のチェロコンサートに出た。そのときは,目の前10mほどの指揮台の上で元気だった。生涯に1度,ロストロポービッチに近づけた瞬間だった。出演しておいてよかった。

プログラムを見ていると,ずっと先に,ロストロポービッチがこのオケを振ることになっていた。

ところで今日の演目は…

  • リヒャルト・ストラウス:ツァラトゥストラかく語りき
  • ワグナー:トリスタンとイゾルデ
  • バルトーク:マンダリン

どれもすばらしかった。木管同士のつなぎの滑らかさ,風のような音色,弦楽器の透明感,金管のよく混ざる音,躍動感のあるリズム。ともかく,すごかった。

<28日(土)>

ミュンヘンでの朝。まずは美術館。Alte PinakotekとNeue Pinakotekを順番にまわった。「ブリューゲルの農民の結婚式」,「怠け者の生活」のあたりはさすが。

ホドラーの「人生に疲れた人々」には思わず共感したりして。

フランクフルトに帰る電車は夕方なので,ニュンフェンブルグに行くことにした。市電に乗って,ニュンフェンブルグの入り口に。そこから数百メートル歩くと,シュロス(お城)がある。それを通り抜けるとまた大庭園。なんせ,向こうの端は見えない。

前回(といっても10年前)と同じく,シュロスを通り過ぎたところのベンチで一休みしたらそのままだった。先には行けず。座っていると,ガチョウが2匹よってきた。見てると草を食べている。くちばしに挟んで引きちぎる。プチプチいう音が聞こえてくる。ガチョウが,地面に生えてる草を食べるのか…という驚きと,その量(30分以上,食べ続け)にも驚いた。

前回は時間の関係でシュロスの中には入れなかったが,今回はチケットを買って入ってみた。立派な家具と,調度品。ロココ風の天井画,壁一面の肖像画(美人画の部屋が有名)。ヨーロッパの城にはまあ,あたりまえのものだけど,やはりその規模は驚嘆もの。カーテンをめくって外を見てたら,怒られた。

そうそう,ミュンヘンに来る電車の中で,翻訳本の1章の改訂が終わったのだった。

帰りの電車のアナウンス。今日のブンデスリーガの結果を放送していた。基本的にあまり放送がなくて静かなDBなので,おもしろかった。ちなみに高原のフランクフルトは点を取れずに負けたそうだ。

ホドラーの人生に疲れた人々
ホドラーの「人生に疲れた人々」
あなたはどれ?やっぱり真ん中ですよね。


ニンフェンブルグ
シュロス・ニンフェンブルグ
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