Frankfurt生活11週目

<17日(日)>

休日らしく,何もしないでいたのだけど,一日ごろごろしているのも何なのでハウプトヴァッヘに出かけた。カフェのテラス席でコーヒーを注文。テラス用メニューには,カップとポットのコーヒーの両方が書いてあったので,カップを頼むと外ではポットしか出せないと言う。腑に落ちないままポットコーヒーを頼んだ。


<18日(月)>

DIPFの近くにあるゲーテ・ギムナジウムを訪問した。この学校は日本の玉川学園と姉妹校提携をしている。なので,毎年教員や生徒が交代で行き来しているらしい。ウェブサイトにはフランス語とイタリア語をやっているとしか書いていないのだけど,日本語の授業もやっている。10年前に一度行ったことがあってそのときはあったはずなのにウェブサイトに掲載されていないので,止めたのだと思っていたら継続していた。

実はそろそろ年度末で,まともな授業はほとんど終了している。それで見学した授業は音楽。木曜日にある学校のサマーコンサートに向けての楽器演奏の授業だった。カリキュラム開発のことや州の指導要領との関連などについて校長に尋ねた。他の学校とちがって,ここでは歌を中心とする音楽の授業を週2時間やっている。それ以外に楽器の授業を2時間とることができる。さらに個人レッスンのコーディネートもやっている(ただし料金は家庭負担)。ということで,音楽に随分力を入れている学校だ。日本の小学校6年生にあたる子どもたちが演奏していたのも,バイオリン,チェロ,オーボエ,フルートなど,本物志向。

ところで,校長先生が前回とは替わっていた。前の人はたしか20年ぐらい継続してやっていたのだったと記憶している。校長の仕事は,企業や地域から寄付金をとってきて学校運営をしやすくすることだと言っていた。道のはす向かいにある教会とも連携していて,そこがやっている公民館的な活動ともつながりをもち,教会のコンピュータ施設も利用しているということも言っていた。新しい校長は2年前から。これからこの人がこの学校をどう変えていくのだろうか。また新学期に訪問させてもらえるように頼んできた。

楽器の演奏の授業
楽器演奏のお披露目
年度末なので練習成果の発表
写真はフルートとオーボエの合奏
12歳の子がオーボエを習っているということだ


楽器の演奏の授業
座っているのでわかりにくいけど
チェロを弾いている

フランケ小学校フランケ小学校の授業
<19日(火)>

やはりDIPFの近くのFrancke Schuleという小学校に行った。ここも参観したのは音楽。小学校2年生の授業。モーツァルトのトルコ行進曲に合わせて,ナイロン袋でリズムをとる活動(ふくらせて音を出す,こする,そこを破いて筒にして両足を通して広げてたたく,紐状にして引っ張るの4種類)。リズムのスコアが工夫されていた。その後,歌を3曲。縦笛の左指4本だけでだせる音(G, A, H, C)で伴奏やメロディーに合わせて演奏。という流れで,子供が飽きないように流れを変えていくやりかた。縦笛の時には間に歌も入ったりして,やはり工夫がある。この教師の工夫というよりも,そういう教材ができているということだろうと思われる。

教室には後方に2台のコンピュータが設置されている。残念ながら全ての教室にあるのかどうかは不明。

帰りに植物園に行ってみた。マレーシアや南米の森林の植物が温室の中で育てられている。巨大なサボテンが印象的。


先週,読解力と電子テキストの理解とのちがいについて議論した相手から,論文が送られてきた。早めに読んでコメントしなきゃ。


<20日( 水)>

あまり天気が良くない。Dipfでいつものように文献調査など。通勤路にあるソーセージ屋台に長蛇の行列ができていた。何ごとかとおもったら,e-plusという携帯キャリアのイベントだった。アンケートに答えるとカレーブルストをもらえるということだった。

夜は6時からフランクフルト・オペラでタンホイザーを観た。序曲の裏でヴェーヌスベルグの洞窟の場面が始まる。しかし,出てきた人たちは,Tシャツやリュックサック。思い思いに舞台に座っていたかと思ったら,服を脱ぎだして海水浴の場面に。その後も服装や舞台装置は現代的。あまりいいとは思えないんだけど,最近のオペラにはこういう演出が多い。狂言を背広でやったら,おかしいでしょ。演奏ももう一つかな。管楽器の和音なども揃っていなかった。

屋台の行列
ソーセージ屋台の行列
どこの世界もただには弱い
ただ,この後大雨が降ってきた
みなさんどうしたのだろう…


ゲートから
到着したH田さん,N川さん
ゲートから
続いてI塚さん,N山さん

ゲーテギムナジウムのサマーコンサート
ゲーテギムナジウムのサマーコンサート
<21日(木)>

H田さん,N川さん,I塚さん,N山さんが日本から到着。空港まで迎えに行く。ホテルにチェックインしたあと,ゲーテギムナジウムのサマーコンサートに行った。コンサートは,学校の筋向かいのマテウス教会で行われる。普段は祭壇のあるところがステージで,教会だけに響きも長くて最高の環境だ。OBや父母もたくさん見に来ていた。

オープニングは低学年のオーケストラと合唱。その後,校長のお話(短かった)に続いて,5,6年の合唱と縦笛の合奏。音楽の授業を見せてもらったKaballo先生も指揮をする。

15分休憩のあと,高学年の合唱とオーケストラ。だんだん技量が高くなる。席が近くだった大学生が,日本語をとてもうまく話すのでおどろいた。ギムナジウムの時から勉強しているだけのことはある。玉川学園にも2ヶ月留学したことがあるとも言っていた。前から思っていたのだけど,本当に国際化をめざすなら日本の子どもたちも,英語,中国語,スペイン語,イタリア語,仏語,ドイツ語,韓国語を選択できるようにすべきだろう。中学校の外国語は選択教科なのだから。

夜は,Basellers Eckeというドイツ料理の店に行った。H田さんご所望のソーセージなどを注文。


<22日(金)>

6時前に起きて,ハウプトヴァッヘで待ち合わせて,ゲザムトシューレに視察に行った。Shule am Riedという。まずはBeeck先生の9年生のICTの授業。通信の歴史についてのプレゼンテーションの授業だった。最初の説明では,4つのプレゼンがあったあと,その内容についてのウェブサイトの作成へと進むはずだったのだけど,プレゼンがしっかり作られている上に,先生の補足説明も長く,結局3つのプレゼンが終わった段階で2時間続きの授業が終了。とても詳しく調べていたので,博物館などに行ったのかと聞いてみたら(フランクフルトには通信博物館がある),それはやっていないとのこと。ウェブと文献による学習らしい。ちょっとしたまちがいだけど,ビル・ゲイツの生年が1925年で,「すごい長生き」なんて言っていたのには笑った。

2つめの授業は,Spiegler先生の授業。10年生対象だった。自由なテーマについて調べてプレゼン資料を作っていた。「火山」「Web2.0」「趣味」などいろいろなテーマでプレゼンを作っていた。

最後はWorff先生の授業。再び9年生だったけど,このクラスはこの学期で卒業する。つまりゲザムトシューレの中のハウプトシューレコースだ。自分が就く職業について調べて,2枚程度のサマリーを作るのが課題だった。ただもう成績も付け終わっていて,おまけに1時から他校とのサッカーの試合があるということで,若干浮き足だった感じ。先生も寛容だった。

その後,Beeck先生に1時間,カリキュラムや情報教育について話を聞く。全ての先生がICTを活用するように推奨はされているが,強制はされていないということだった。教材については,州ごとにたてられている教育サーバーなどで共有しているとのことだけど,この先生は物理に関しては隣の州のものがいいので,それを使っているということだった。

昼食をエッシェンハイマー塔でたつ金曜市で食べたあと(みなさん鶏の丸焼きを食べてもらいたかった),Dipfに立ち寄る。職場の様子を紹介したり,Braechle女史をみんなに紹介したりする。

夜は,楽しみにしていたFressgass通りのVINUMでドイツワインを楽しんだ。地下にワイン樽を並べた大空間があって,そこで飲む。食事も上品で,とてもいい。でも,みんな時差と早朝からの学校視察で疲れ気味だった。H田さんの目が閉じかかったところで終了。

プレゼンの授業
通信の歴史についてのプレゼン

職業調べ
職業調べ

生徒たち
撮影してくれと集まってきた子どもたち

フィーヌムで
ドイツワインレストラン・Vinumで


グーテンベルグ工房
復元されたグーテンベルグ工房

イベントの跡?
巨大な木製の活字を洗っている
何かのイベントの後だろう


<23日(土)>

マインツに行った。目的は,大聖堂とグーテンベルグ博物館。まず大聖堂に行ってみた…ら,荘厳にミサをやっていた。これはまずい…ということで後回しにして,グーテンベルグ博物館に行った。これが予想をはるかに越えて面白い。グーテンベルグは活字印刷を発明して文字文化を一変させた人物だ。幅広く印刷の歴史(浮世絵などもあった)を紹介する中に,グーテンベルグの印刷工房を再現した展示もあった。

ガイドブックの中に,このことによって,読書が広まると同時に「読書狂い」が心配されたという主旨の記述があって,おもしろかった。ラジオやテレビ,コンピュータなど新しいメディアが出てくるたびに,それにのめり込む人がいて,それは前の世代から見れば危なっかしく見えるのだ。ただ,文字に依存しきる前の「声の文化」では,文字の価値が広くは認識されていなかったことがわかる。そこで大事にされていた実体験や物語を記憶することの価値が,文字によって稀薄になろうとしていたのだろう。さて,映像にシフトしようとしている今の文化,それはどんな新しい価値を生むのだろう。

とても面白くて,一つ一つの展示の意味をわかりながらじっくり見たいと思いつつも,列車の時間があるので大聖堂に移動した。ドアを開けてびっくり,中ではミサから一転,大音響でコンサートをやっていた。


電車でリューデスハイムに移動。ここから少し離れた所にあるライン川沿いのホテルで遅めの昼食。ワインも飲んだ。簡単な昼食になるはずが,実に立派なものになってしまった。ワインもみんなで2本。その後,自動演奏楽器の博物館に行った。ところが,フランス人ツアーの予約が入っているので,見ることはできないといわれた。あまりにみんなで残念そうな顔をしたのだろう,この部屋だけねと言われて,1階の1部屋で4つの楽器のデモをしてくれた。鍵盤,ドラム,シンバル,トライアングル,バンジョーなどいろいろな楽器が紙に穿孔されたプログラムに従って鳴り響く。精巧で楽しいデモンストレーションだった。最後の1つ,5つめに取りかかった所で,残念ながらツアーの到着。見学は終了。でも,無料だったのでいいか。

夜は,ザクセンハウゼンの正当ドイツ料理の店(Zum Grauen Bock)でフランクフルトの名物,アップルワインを楽しんでもらった。それにグリーンソースも。いい締めくくりだった。明日はミュンヘンに移動する。

自動演奏マシン
自動演奏機

ツム・グラオエン・ボックにて
ツム・グラオエン・ボックで
アップルワインを頼む


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