1月2日(水)〜9日(水)


まず,オペラの照明について調べた結果の報告。なんでも分かるインターネット時代!ありました!〔→〕

以下,要約。

ということのようだ。できないことはやってなかったというか,そういう発想がなかったということ。そして,照明の発達が上演の時間や観劇形態を変えてきたというのが興味深い。照明もメディアなのだ。「舞台もフォーカスと呼ばれる明るいところ,前面中央以外はほとんど光が届かず…」「そのフォーカスを占めるために,歌手のほうも中央から動きたがらないので,当時は演出の意味もあまりなかった」というのに納得。フォーカスは,思考の論文にもたくさん出てくるワードだけど,フォーカスからはずれると意識はそこに行かない。今では,意図的にフォーカスを動かすことができて,それが演出にもなる。
1月2日(水)
ミュンヘンを正午過ぎに飛ぶ便で,ブダペストに向かう。フライト時間は1時間ほど。ここで,フランクフルトからの便でやってくる人たちと合流してニーレジハーザまでバスで向かうはずだった。でも,大半が来ない。フランクフルト空港での乗り換えにブレーキがかかって動けなくなる故障で遅れて,8時間ほど後の便で来るとのこと。あまりに時間があるので,ブダペスト市内で食事をしてくることになった。

そのおかげで,船上レストランでのディナーと,夜景を楽しむことができた。23時過ぎに空港に降り立った人たちと一緒に,3時間ほどかけてニーレジハーザに到着。フロントで鍵をもらって,部屋に入ってすぐに就寝。

宮殿のライトアップ
ドナウ川の向こうに
ライトアップされた宮殿と鎖橋
すばらしい光景だ

八角堂
八角形の建物…実は用途がわからない

1月3日(木)〜4日(金)

ウクライナにほど近いハンガリー東端の街,ニーレジハーザを訪れた。ほとんどイメージを持っていなかった街だったけど,素敵な街に思えた。ホテルのそばにあった,8角形の小さな小屋がかわいく見えた。

最近日本では境目(アーティキュレーション)をどうするかという議論がかまびすしいけど,資料によれば,ハンガリーでは小学校の年限がフレキシブル。4年まで小学校に行って5年生から上級学校に進む場合,6年生まで小学校に通ってそこから上級学校に移る場合。本来の8年生まで小学校に通う場合と3通りある。どこで移るかは,両親や本人が決める(といってもほとんど両親の希望だろうけど)ということなのだけど,これに対応するカリキュラムはどうなっているのだろうか。受け入れる側の上級学校のカリキュラムがかなり個別化されていないとできない話だ。さらに,就学前教育の1年間,幼稚園に通うことが義務化されている。

校長の裁量で学校の特色を出すことができる国も多いが,ここもそう。体育,音楽,算数,外国語など,各学校で焦点をあてる科目がちがう。それに合わせて授業時数も変えられる。どの学校に行くかは,うやはり子どもや親が決める。カリキュラムの柔軟性がもてない中で学校の特色を出すことを求められても,あまりできることは多くないが,特色を実際に授業時数に反映させられるというのは,とても重要なことだと思う。…もっとも,日本だとせっかく出した特色が,どの学校も同じ…という結末になりはしないかとも思う。

…以上が,ハンガリーの教育についての基礎知識。

2日間,授業を視察。これまでにいくつか聞いていたことを具体的に知ることができた。どこの街にも,教育についてしっかり考えて実践している人たちがいる。日本でおこりつつある(所謂)「教育再生」を見ると,教育を別の目的の道具にしているようにも見える。教育は子どもたちのためであり,誰かに決められるのではなく,それぞれが考えや未来を創る場になるような柔軟性を失ってはいけないのだと思った。


1月5日(土)

午後から,ブダペストに移動。その前に…,近くの村にトカイという所がある。トカイという貴腐ワインで有名。そこのワインセラーに寄った。そのブランドイメージから,とても大きな醸造所だと思っていたけど,うかがったのは小さな家族経営のワイナリー。そういう小さなワイナリーがトカイの駅前にずらっと並んでいる。

ワインの試飲を6杯。少しずつ,糖度を上げていく。これまでに飲んだトカイワインは,ただ甘いだけで,若干苦かったり後味が残ったりしていたけど,ここのワインはどれもスッキリしたいい味わいだった。これで済ますにしのびなく,荷物が重くなるのを承知で,自宅用に何本か仕入れした。

ワインの樽
ワインセラーの樽
壁の黒いのはカビだけどこれが大事なんだそうだ

トカイワイン
トカイワイン!
ワインセラーの裏に広がるワイン畑
ワインセラーの裏に広がるワイン畑
斜面になっていてワインセラーはそこを掘って創られる
つくりかけのワインセラー
つくりかけのワインセラー
何年もかけて少しずつ深くしていく

夕食は,ゲレールトの丘の城塞にあるCitadella(城塞)というレストラン。バイオリンとチターの生演奏がある。でも,少々やかましくて話ができない。

シタデーラの演奏
レストラン・シタデーラの生演奏
ゲレールトの丘からの夜景
ゲレールトの丘からの夜景
ペスト地区

1月6日(日)

マーチャーシュ教会のミサに出た。新年のミサだったからか,オルガンだけじゃなくて,小編成のオーケストラと聖歌隊がついていた。ミサはマジャール語でわからなくても,流れは一緒。

夜は,まいど歌劇場でオペラ鑑賞。ジルベスターで聴いたこうもりをここでも。

最高だったのは,オルロフスキー。男装の伯爵は,トルコ兵の感じかな。気持の良い跳躍と,メリハリの利いた声だった。この演出も劇中コンサートで,酔っ払った看守が「自分の楽しみは囚人に歌わせること」と言って,全員整列させて1幕の「近くに大きな鳥小屋がある…」(パーティに招待されてワクワクしてる場面)の歌を男声合唱させる設定。この合唱がさすが!


1月7〜8日(月)

ブダペストでの授業視察。各学校によって,あるいは授業者によって共通すること,違う所,メディアの使い方など,いろいろ考えることができた。

学校は,計算や文字を書く勉強だけじゃなくて,全人的人間形成をするところなのは言うまでもない。ハンガリーは偉大な数学者やコンピュータ科学者をたくさん出しているが,音楽家の数はもっとすごい。専門家をたくさん出すには,裾野が広くなければならないけど,それが柔軟性の高い学校教育のカリキュラムの中に組み込まれているのだと思えた。

そして,音楽も図工も体育も総合も,それぞれに大事な役割を持っていると常に思っているけど,逆にそちら側でも人間形成に資する学習をさせられるかどうかを考えなければとも思った。

…ただ,ドイツも同じだけど,東側だった時代の教育過程やその成果,その前後との違いや教員の継続性については,なかなかわからない難しい問題なのだと思う。

最後の晩ご飯もハンガリー料理。Marvanymenyasszonyというブタ地区の住宅地にあるレストラン。音楽と踊りがついていたのだけど,レベルはこの前のものよりかなり高かった。音楽には満足! 踊り
レストランでの生演奏と踊り


1月9日(水)

午前中のフライトで,フランクフルト空港に移動。その後,ICEでエアランゲンに戻った。少し長目のハンガリー滞在で,久しぶりに帰ると仮住まいながら「家に帰った」という気がした。でも,いい視察だった。


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