Frankfurt生活17週目

<7月29日(日)>

明日からいろいろイベントが続くので,できるだけ進めておこうと思って,論文にかかる。10年近く前に書いた報告書をもとに,1つの節ができた。全体の流れの中で調整が必要になるとは思うけど,まあ仕事量としてはそこそこだったかな。

ミュンヘン組は,ツークシュピッツに登ったらしい。登るといっても,登山列車とロープウェイ。上からの下界や湖の景色はとてつもなくきれいなので行きたかった。残念。でも,やはり寒かったらしい。零下だったりするものね。

目が覚めたらメルボルンに出発の予定。こちらも楽しみ。宿やチャーターバスの手配なども一応は終わっているし。学校も2校,合わせて4日間行くことになっている。向こうではゼミ生が2組に分かれて,低学年と高学年を対象に,日本の文化に関する授業をする。その構想も一応はできているようだ。

ツークシュピッツ
ドイツ最高峰,ツークシュピッツからの風景
(今回は行ってないけど:1999年に撮影)


シンガポール空港
シンガポールのチャンギ空港
ショップやラウンジが充実した,これぞハブ空港
成田の第一ターミナルもよくなったけど
かけ声だけじゃなくて中身を変えないと
国際的な地位は危うい
なぜか数独の大会をやっていた


ホテル
Kingsgate Hotel
一番の安さ…とはいうものの
安かろう悪かろうなのだ

<7月30〜31日(月/火)>

シンガポール空港に到着。予約した便だとここで12時間待ち。それでは到着が1日朝の6時頃になってしまうので,できれば1本早い便に変えたい。乗り換えカウンターで聞いてみたら,前の便は満席。とりあえず予約を入れて,2時間後の便の空席を待つ。45分前に来いということだったので行ってみたら,運良く空席が出ていた。この空席待ちに備えて荷物を機内持ち込みにしておいたのでした…が,実はその必要はなかった。まわりをみていると,手続きをするときに荷物タグを渡せば乗せ変えてくれるのだそうだ。

シンガポールから7時間乗って,メルボルンに到着。19時30頃。ドイツで使っていた携帯のSIMカードはここでは使えない。何かと不便かと思って,空港のVodaphonでオーストラリア用のものを購入した。

ホテルには9時過ぎに到着…の直前,M宅先生とF井先生にばったり遭遇。立ち話の中でわかったことは,ホテルの部屋には風呂,シャワー,電気などがないこと。あまりのことにホテルを変えたそうだ。やはり値段相応のことはある。ここ,二段ベッドの部屋があったりで,とても安い。学生君たちにはいい値段だと思ってここにした(いつも使っているアパートホテルが満室だったこともある)。

チェックインしてみると,確かにあまりよくない。バックパッカーズ・インと同レベルかな。だとすれば,いさぎよくそちらにしておいてもよかったかもしれない。

ゼミ生他,みんなはロビーや部屋にいて,全員の到着を確認できた。ひとまず安心。おなかも減っていたので,I井先生とS田君を誘って外に出た。でも食べるところは見当たらず,バーでビールだけを飲む。久しぶりのVBは,ドイツのものとかなり違った味。

ホテルに帰って荷物を整理して寝ようと思ったら…大事件発生。PCがない。なんで…?どこに忘れた?これで一晩中まんじりともできず。


<8月1日(水)>

朝は8時集合でCarey小学校に行くことになっていた。時間に合わせて取材道具を持って…と思うと,昨日は気づかなかったデジカメもない。そこで,「どこかで置き忘れたのか?」という可能性から,「抜かれたのだ」という確信に変わる。可能性があるとしたら,Vodaphon。SIMの説明を聞いたりしているときに,荷物に注意が行かなくなる。足下に置いていたつもりだったのだけど…。

でもまあ,とりあえず一度空港に行ってみて,lost & foundサービスで問い合わせる。Vodaphonで携帯を出すときに荷物を出したかもしれないし。デジカメの長い紐はそのときにみた覚えがあるし。でも,やはり忘れ物は届いていないとのこと。

Carey小学校にはタクシーで向かう。みんなが一足先に着いていた。約束の時間には間に合った。副校長のChrisと1年ぶりに会って,いきなり失せ物話。先に着いたみんなから話を聞いて,心配してくれていた。オフィスの電話を貸してねとお願いしておく。

学校見学がはじめての学生君も多い。まずは,全体を案内してもらう。それから,少し長めに授業をみることになった。できれば最初から最後までみたい。

ここの授業の特徴は,ローテーション制度。課題が4つ同時進行して,それを4つのグループが順序をずらしながら自学していく。教師が関わるのは,主にそのうちの1つ。こうすると,5〜6人を相手に授業をすることになる。他のグループには,よく計画されたワークシートが渡されている。子供たちはそれに黙々と取り組んでいる。訓練がよくできている。

4年生は,Systemをテーマにして総合的に学んでいる。柱は2つ。人間の体を支えているシステム(消化器官,骨格,筋肉,生殖器官などさまざま)と植物のシステム。この2つを比べながら学んでいく。その中の豆の栽培実験に関する授業。まず,黒板代わりのインタラクティブボードの前に集まって,すでに用意されていた植物栽培に関するたくさんの単語に,子供たちが思いつくものを追加する。出終わったところで,それを「必要な物」と「方法」の2つに分類していく。このとき,インタラクティブボードに移された単語を直接指で触って,それぞれの島に移動してくことができる。子供たちが次々に出て行って難なくやっていく。それが終わったら,各自のノートにそれを参考にしながら豆栽培についてのマニュアルを文章で書くのが課題。だから,みんなちがった表現になる。先生は,机間巡視しながらどんどん修正していく。単語しか書いていない子には文章をしゃべらせてから,それを書けばいいんだよと励ましたり,文章の冗長な部分に削除線をつけたり,いろんな指導をしている。この評価の一部をまかされたのにはびっくりした。

授業の流れ自体はこれだけなのだけど,ともかく文章を書くことに力点をおいた授業スタイルは変わらない。とても力のある教師だと思う。学年に2つのクラスがあって,もう一つのクラスでは,もう豆をプラスチックのコップに植えていた。普通は真ん中に植えるのだろうけど,観察しやすいように,端っこに植える。透明のコップを通して発芽の様子などがよく見える。それに,それを2つ教室の隅においておいて,ウェブカメラでずっと撮影している。20分ごとにパソコンに画像を取り込んでいくしかけになっている。今度,どのように育ったのかをまとめるときに,子供たちが画像を使えるようにするためだ。出来合いの写真を数枚渡して書かせることもできるのだろうけど,自分たちで育てた物をもとにして大事な物を選ぶところに価値がある。場合によっては,どっちか腐って根がでないこともあるだろう。そのときは原因を考えて書かせたりすることもできる。


昼過ぎ,つまりシンガポールが10時になったときに,Chrisのオフィスの電話を借りて,ANAのシンガポール・オフィスに事情を説明して,シンガポール航空のターミナルでの忘れ物をチェックしてもらう。折り返しの電話をまって結果を聞いたら,やはりないとのこと。それはそうだよなぁ。


ホテルに帰った後,このままではどうにもならないので,コンピュータを買いにいくことにした。S田君が調べてくれたApple取扱店で,新しいMacBookを購入。メモリーの増設などはできなかったので,とりあえず出来合いのものを手に入れた。これでなんとか記録はつけられる。

ケリー小学校
ケリー小学校
私学で小学校〜高校まで


ケリー小学校
体のシステムについての学習
4つの活動に分かれて自学する
テキストを読むグループは教師が音読し
大事なところに線を引いている


ケリー小学校
豆を育てる「システム」についての授業
インタラクティブボードに関連単語が映され
それを指で移動し分類している


ケリー小学校
豆の成長を20分ごとに自動記録するウェブカム

ケリー小学校
豆の栽培に必要な物・栽培の方法について

ケリー小学校
恐竜についての授業

ケリー小学校
恐竜の名前を特定するワークシート
< 8月2日(木)>

1階のPrepと低学年の部屋を自由に見て回った。どの教室も,同じようによく統制されている。授業は恐竜がテーマ。博物館の学芸員を素材としたテキストをプロジェクタで大写しして,読みながら解説する。グループ別の課題もやはりあって,コンピュータでは恐竜を頭,胴,しっぽの3つにわけてランダムに組み合わせるソフトを使う。こうしてできた新しい恐竜の特徴を考えて書くのが課題。写真は,名前と形態の特徴のリストから,名前をあてるもの。決め手となった箇所には,色を塗る。恐竜を題材とした,形や特徴の認識の学習だ

午後から,カリキュラム担当の副校長Lindaと質疑の時間が取れた。ブロック制で運営していて,リテラシーのブロック,数のブロック,統合のブロックの3つの構成になっていること,子供に自分の学習に責任を持たせて「考える」ことができるようにすることを最大の目標にしていることなどの話を聞く。最後にこうやって質疑をすると,頭が活性化すると言ってくれた。

夜,カレー小・中で行われたコンサートに行った。最初はオーケストラ。バンドやエレキギターの合奏,電子弦楽器のアンサンブルなどもあって,あっという間の1時間半だった。


<8月3日(金)>

アポロ・パークウェイズ小学校に行くために,バスをチャーターしてあった。でも,時間通りに来ない。連絡先は無くなったパソコンの中。ウェブ検索で,バス会社を見つけて電話を入れる。でも,留守電。クレームを付けたら,しばらくして電話がかかってきた。空港に迎えにいっているんだと。メールやファックスでホテルの場所も確認したろうが…。予定より30分遅れで来たバスは,しかし14人乗り。こっちは16人,途中で人数が増えたので,追加料金を払って大きくしたのに,ドライバーには伝わってない。

結局そのバスに乗って,バス会社まで移動。学生君が2人,うしろで膝を抱えて床に座る。しばらく走ったところのバス会社駐車場で大きなバスに乗り換えた。小学校には,1時間半遅れで到着。見学できる時間は限られているのに。

この学校は,最近研究室で取り組んでいるシンキング・ツールの宝庫。子供たちは,それらを用いながら個別の課題に取り組んでいる。一方で,一斉に時間を計って計算問題をやる場面もみられる。

午前中の中休みと昼食の時間にLindsey校長と話ができた。ここでも,単なる知識ではなく知識を活用する思考力に重点をおいた指導をしている。そうでなければ,これからの競争の激しいグローバル社会で生き抜いていけないと言う。

強調していたのは,そのコンセプトの下で行われるカリキュラムや指導法について,学校が一貫して取り入れることの重要さ。子供が進級したときに,違ったやり方に適応する必要がないように,どのクラス,どの学年でも同じように学習を進めるようにしている。そのために,新人教師はベテランと組み合わせて,オープンスペースの教室で隣り合わせの授業ができるように配置する,毎週,カリキュラム計画の時間を設けて,一緒にプラニングする,などの工夫をしているとのこと。


午後は,ヤラ・バレーのワイナリーを4つはしごして帰った。1つだけ頼んでいたのだけど,朝遅れた埋め合わせに,帰りは遅くなってもいいんだと。埋め合わせにはならんのだけどなぁ。

夜は教員チームとサウスバンクの川沿いのレストランで食べた。1年ぶりの夜景が,とても奇麗だった。

アポロ・パークウェイズ小学校
Yチャートでみたこと,聞いたこと,感じたことをまとめてい

アポロ・パークウェイズ小学校
キャンプについてのPMI

アポロ・パークウェイズ小学校
新しい校舎ができて無線LANが入りMacBookが導入された
それをつかってダイヤモンド図を書いている


ヤラ・バレーのワイナリー
テイスティングの講習会
まず色をみて,香りを楽しんで,舌のいろいろな部分で味わう

レズリーの家で
レズリーの家の前で(M宅先生,F井先生

レズリーの家で
ディナーをごちそうになる

レズリーの家で
レズリーの料理(でも料理はきらいなんだって

<8月4日(土)>

朝8時半より,ホテルのロビーでゼミ。今回のツアーで,学んだことや気づいたことの発表。全員の意見を集めてみたら,予想していたよりもしっかり見学していることがわかった。子供にインタビューなどもやっていた。上出来。

10時にフロントでLasleyと待ち合わせをして,教員チームと一緒に近くのカフェで若干のミーティング。Lasleyは,メルボルンとのコンタクトがとれるようになったキーパーソン。今は教師を辞めてコンサルタントや研修講師をしている。ご主人ときてくれた。2年ぶりでいろいろ話が弾む。なんと,ご自宅でのディナーに招待された。

午後から,月曜日に学生が提供する日本文化についての2つの授業のリハーサル。6年生向けが,一休さんの昔話の結末を考えてもらう授業。2年は折り紙。今回は準備に取りかかるのも早く,プレゼンや紙芝居がしっかりできていた。毎年一度は陥るのが,言葉に頼りすぎること。紙芝居も読みながらできるという点ではよく考えついたと思ういいアイデアだけど,当然言葉が中心になる。言葉に頼る授業はとても不安。

5時にLasleyのご主人が迎えにきてくれた。ご自宅は実はアポロ・パークウェイズ小学校の近く。30年前の建築だということだけど,とてもモダンなデザインできれいなお宅だ。先に到着していた教員チームが,Lasleyに不思議な日本語を教えていた。三枝のジェスチャー付きで「イラッシャーイ」と出迎えてくれた。

食事はLasleyの手作り。トマトスープ,サラダ,鶏とビーフとポテトのオーブン焼き。見た目も味も最高。ずっと笑いっぱなしの3時間があっという間にすぎた。今回の事件を埋め合わせてくれる暖かい時間だった。


ところで,午後のリハーサルで3時間ソファーに座り続けて,立ち上がったときに腰を痛めた。ホテルに帰る頃には,かなり苦痛。起伏の多いツアーになった。H田先生に痛み止めをもらって就寝。


※写真を今回の参加者に提供していただいています。感謝。
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