Syria-Workshop

3月9日

3月9日の金曜日の夜,日本を発ってシリアに向かう。いろいろな人に「大丈夫なん?」と聞かれたけど,実は自分でも「大丈夫やろか…」という不安をぬぐえない。ただ,不安は政情のことではなくて,むしろ言語。看板や道標などが読めるはずもなく,まともに道を歩けるのだろうか…とか。政情に関しては,プロジェクトメンバーからいろいろ聞いていて,とても安全ということなので…。

同日,K保田先生もダマスカスに向かっている。こちらはカタール航空。僕はエミレーツ。エミレーツ航空はドバイ経由。関空でエミレーツ行きのゲートに行ってみてびっくり。大学院卒業生でJICAで働いているO野君とばったり出合った。ボツワナに行くそうだ。ボツワナではICT政策が進んでいて,それを支援しに行くというのだから,さらにびっくり。知らないところで世界は動く。

一緒にエミレーツに乗って,ドバイに着いた。ドバイ空港で6時間ほど時間待ち。O野君も3時間ほどの待ち。その間,アラブ圏で唯一のアイリッシュパブで,別のJICA職員を待つはずが,ちがうところでギネスのタップを見つけて入ってしまった。そこでギネスを飲みつつ時間待ち。

O野君が出発するのを見送って,さらに空港内をうろうろすると,確かにアイリッシュパブがある。もう少し根気よく探せばよかった。あと,動く歩道を2つのればあったのに。

ドバイ空港のアイリッシュパブ

ドバイ空港では,待ち時間が4時間以上ある場合は,食事が支給される…という小さな看板を見つけて,入ってみた。カレーだった。まあ,そこそこ。

3月10日

日本を出てから20時間ほど…。ようやくダマスカス空港に到着。荷物がなかなか出てこない。ようやくゲットしてゲートを出ると,先に着いていたK保田先生,T任君,K田君が出迎えてくれた。一緒に車に乗って,難民キャンプに。

ダマスカスはとても歴史の古い町だ。そのはずれにパレスチナ難民キャンプがある。これは,1946年以降,難民として流入してきたパレスチナ人たちがつくりあげてきた都市。これから生活するのは,そこで借りた家具付きアパート。先に入ったK野君が見つけてくれた豪華な4LDK。学生がMako, K野君,T任君,K田君,K保田先生,慶應のT辺先生,Makoの妹のMiko,それに僕の8人で生活する。

着いたら,荷物をほどく間もなく,シチューの夕食。ここでの食事は,先に入っていたT辺先生がずっと作ってくれている。良い味。

食事を終えると,UNRWAからスーパーバイザーのハムゼとカマル,ワークショップに参加している教師のリン,JICAのF川さんが来て,ワークショップの準備会議が始まった。

僕の仕事は,ルーブリック評価についてのワークショップをすること。しかし,ネタは全く作っていない。少し様子を聞いて,とりあえずPPTの準備を始めた。K保田先生もPPTづくり。これができると,ハムゼたちが必要な部分をアラビア語に訳してくれる。

9時ごろになって,ようやく完成。ハムゼと通訳の打ち合わせもかねて,PPTの確認。いきなり大仕事だった。

ダマスカスでのフラット

借りたフラットのリビングルーム
立派なソファーがおいてあるリビング。
手前にダイビングテーブルもある。
夕食後のブレインストーミング
ブレインストーミング。
これはルーブリックのモデルを作っているところ。

K野君が先発隊で入って借りてくれたのは,写真のような家具付きフラット。もともとここに住んでいた人はカナダに移住して,時々帰ってくるだけらしい。空いている時に,こうして貸してくれる。みんなの話では,これまでに借りたフラットの中で,最高のものだとのこと。

このワークショップの仕事は,実は2年を終えようとしている。Makoが入学したときに一緒に持ってきたプロジェクトだった。これまでに彼らは何度も足を運んで,いろいろなワークショップをやってきた。その間,100名を超える教師がワークショップに参加し,最後まで残ったのが30名ほど。今回は,プロジェクトの最終局面で,残った教師達の教員コミュニティをしっかり作って,自律的な活動を行ってもらいながら,教師ポートフォリオをつくることをめざす。そして,そのポートフォリオをルーブリックを用いて自己評価,相互評価していくというのである。

ワークショップは,準備がとても大変。どのような活動を組み入れて,何を考えてもらって,そのためにどのようなシートを作るのか,それをどのように記録し,何を参加者に返すのか,など,議論すべき事が山のようにある。したがって,昼間のワークショップが終わってフラットに帰ると,すぐに次の日の準備がはじまる。リビングの白い壁を利用して,ブレインストーミングをやったりもした。ともかく,期間中毎日24時間,ワークショップ漬けだった。みんなよく働く。


3月11日

今日は,教師コミュニティに向けたワークショップ。会場となるサラファン小学校の視聴覚室に集合。フラットから歩いて10分程度。昨日はよく見なかった難民キャンプの景色に目を奪われながら到着。

朝のミーティング 朝のミーティング

到着後,またすぐにハムゼとカマルとの打ち合わせ。この2人は,UNRWAの教育省に所属するスーパーバイザー。ハムゼは視聴覚担当,カマルは情報教育担当。この2人が行う教員向けのワークショップを,われわれが支援するという形をとっている。したがって,基本的な進行は彼らがやり,われわれは所々で講師として,ファシリテーターとして,記録係として,雑用係として入る。

ワークショップ前の歓談 ワークショップ前の歓談

ワークショップのメンバーがあつまるまで,輪になって座談。こういう時間をつくるのが大切なんだというMakoが設定した。

ワークショップはK保田先生の教員コミュニティの話から。ビジネスの世界で言われているCETIモデルを使いながら,いかにみんなの知見を意識的に共有することが大事かを説明した。僕たちが来る前に,教師達を4つのグループに分けて,夏までに何をプロダクトとして残すかを考えさせていた。それぞれのグループごとにコミュニティを作りながら進んでいく。

K保田先生の講義
手慣れたK保田先生の講義。
ワークショップをする僕
一所懸命プレゼンをしている。
Vサインをしているのではない。

これまでのワークショップでも,教師達はポートフォリオを作ってきた。これからは,それぞれのコミュニティの中で,より高い成果を目指して目標設定をし,基準をつくりながら自律していく。そのための道具がルーブリックだ。

ルーブリックのワークショップでは,僕がいつもやるスピーチをネタに,ルーブリックがあることでどうスピーチが変わるか,評価する意識が変わるかを考えてもらった。 これをアラビア語でやるのを見るとはね…。思いもしなかった。

ワークショップは,時間が足りないながらも,うまく終了。フラットに帰った後は,すこし休んで明日の準備。明日も同じくルーブリックについてのワークショップだけど,相手と内容がちがう。また新しいものを作らなければ。

難民キャンプの学校

ダマスカスには難民キャンプが4つある。そのうち1の1つ,ヤルムークというキャンプが,われわれの滞在先であり,中心となる学校「サラファン小学校」がある所であり,UNRWAの事務所がある所でもある。キャンプと言っても,徹子さんがよく行くようなテントのキャンプではなくて,ビルばかり。個人商店も軒を揃える。ダマスカスの道路標識にも,「Camp」の文字が書き込まれている。テントからはじまったキャンプが,60年たった今では,普通の都市の一部になっている。

学校は,高い塀で囲まれている。学校の数の割に子どもの数がずっと多いので,午前,午後の二部生になっている。一応,午前,午後で男女の別があるが,固定されているわけではなく,週によって変わるそうだ。校長先生や職員も午前,午後で入れ替わる。校長室も2つある。教師の子どもは,自分の親が学校に行く時間帯に通学する方が便利なため,男女の別なく通学ている。したがって,数百人の男子の中に,10名程度の女子が混ざったりしている。

学校の始まりに集会をする
学校の始まりに集会をする
二階から教師が指図する
ここから教師が指図する

運動場は,コンクリートタイル張り。そこでサッカーでもなんでもする。制服は青のロング丈のもの。アラビックな音楽に合わせて徐々に集まって並んでいく集会風景がおもしろい。建物の2階からは,教師が笛を吹きながら動きを指示する。クラスごとになんとなく整列してなんとなく次の活動場所に移動していく。不思議な集会だ。

体育の授業 体育の授業
ソフトボールのダイアモンド やり投げの練習をする女の子たち

運動場にはJICAが導入した,ソフトボールのダイアモンドが書いてあった。日本もいろんなものを輸出している。

別のキャンプにある「ファルージャ小学校」の体育の時間に,女子がやり投げをやっていた。その背景は,いつでも戦える訓練をするということらしい。とりあえず平和な日本とは,この辺が違っている。でも,槍では近代戦争は戦えまい。精神論…。

学校に行くと,外国人が珍しくてみんな集まってくる。カメラを向けるとなおさらだ。決して自然に遊んでいる風景は撮れないのではないかと思ったりする。すごい歓迎ぶりだった。

駆け寄ってきた子どもたち
駆け寄ってきた子どもたち
駆け寄ってきた子どもたち
とてもいい顔を見せてくれる
リソース室の教材
教材室には,日本でも昔使っていた掛け図がおいてあった
リソース室の教材
どれも使い古されている

プロジェクトの対象校は,180もある難民の学校の中でも,最も設備の進んだところだけど,視聴覚室に置いてある教材は,なかなかの年季もの。新しくて,子どもの興味を引く教材が沢山欲しいところだ。


3月12日

今日は,UNRWA教育省のスーパーバイザーに対するワークショップ。日本で言うと,指導主事。教科ごとに担当が決まっている。彼らが教員コミュニティの面倒を見ることになっているけど,人によって重宝がられたり疎まれたりしているらしい。これは万国共通。

この人たちとルーブリックの関わりは,教員コミュニティの活動を,外部から評価するための指標という位置づけ。なので,昨日の自己評価のためのものとは,少し作り方もちがっている。そのあたりがうまく伝われば…と思ってはじめたのだけど…。

今日は,実際に使うルーブリックをつくるところまでできた。ただ,書かれているのがアラビア語。見ただけではさっぱりわからない。ハムゼの通訳を介してやりとりしたけど,それでも結構おもしろい議論ができたように思う。

集まってきたスーパーバイザー
集まってきたスーパーバイザー
場所は,UNRWAのEducational Development Centerの横
日本が寄贈した多目的教室
外壁に「ありがとう,日本」って書いてある
でもシリアの人には読めない

まず,ルーブリックについての知識は,ある程度持っていたようだ。そして,ワークショップの途中で議論がはじまった。みんなが口々に自分の考えを述べる。収拾つかない。

ワークショップ
今日は,カマルの通訳ではじまった
オーストラリアでのルーブリックの実例を示したりして
それなりに情報提供できたと思う
ワークショップ
その話はこっちにおいておいて…
盆踊りとちがうよ

どうやらこれがシリア流。自分の意見を言うことがきわめて重要らしい。一度誰かがはじめたら,次々みんなしゃべりだす。しかも同時に。続けるためには,必死で割りこなければならなかった。でも,面白い。日本の先生を相手にしてたら,こんなことには絶対ならない。自分の意見を言ってなんぼってのは,結構いいと思った。

ルーブリックづくり
5項目でルーブリックをつくってみる
話し合い風景
EDC の副所長も入って議論
ルーブリックづくり
みんなで意見を出し合う
話し合い風景
熱がはいっているのがわかる

さあ,ワークショップが終わった。すごい開放感。フラットに帰って,T辺先生に買ってきてもらった鶏を食べる。すごいうまい。でも写真はない。明日からは,学校訪問。LCA(Learner Centered Approach)の授業を見る。実際に,どんなことを目指しているのかがわかるはず。でも,その前に今日の午後は時間がある。みんなでダマスカスの町に行った。

ダマスカス市街

クラフトセンター
さまざまな手工品を売ってるクラフトセンター
アルファベット板
いろいろなアルファベットが載っているシート
拡大図
寄ってみるとこんな感じ
モスク
クラフトセンターの中にあるモスク
手前は昔噴水だった

シリアの特産品と言えば,手工のアクセサリーとかモザイク模様の木製品。絨毯はあたりまえ。らくだの革製品などもある。クラフトセンターには,そういったものが集まっている。

クラフトセンターのちょうど真ん中を横にはいるとモスクがある。モスクの傷みようや,水の出ない噴水を見ると,往時がしのばれる。いつまでここは綺麗だったのだろう。どうしてそれが維持できなかったのだろう。輝いていた時期に見てみたかった。

アクセサリーの店
アクセサリーの店
アルファベット板
琵琶の先祖,ウードを売ってる

ダマスカスには,かつてメッカとつなぐ鉄道が走っていた。今は廃線。駅は,本屋になっている。ただ,現在地下鉄工事中で,それがここに着くらしい。そうなると再び駅の賑わいを取り戻すかも知れない。楽しみだ。

ダマスカス駅
ダマスカスの駅舎
城壁
旧市街をとりかこむ城壁
十字軍を相手につくったもの
こちらから見ると歴史が違って見える

駅の側から大アーケード街がウマイヤドモスクまで続いている。この感じ,フランスのパサージュっぽいでしょ。フランス領だった時からあるらしい。天井の穴は,独立したときに喜んで発砲した跡なんだそうだ。そのまま残ってる屋根ってすごいかも。さびて落ちてこんのか…?

アーケード街
アーケード街
必見は天井の穴
駄菓子屋
駄菓子屋さん

アーケード街で見たものの一つ。ジュース売り。どうやって注ぐかというと,おじぎをするんですね。返してもらったコップをすすぐ水は,別にもってる。

ジュース屋
アラビックなジュース屋さん
おじぎするジュース屋
注ぐ時はおじぎをする

アーケードを抜けると,とてもきれいなモスクがある。金色に輝いている。ウマイヤドモスクという。時間が遅かったけど入ってみた。

アーケード街で見たものの一つ。ジュース売り。どうやって注ぐかというと,おじぎをするんですね。返してもらったコップをすすぐ水は,別にもってる。

お金の貯蔵庫
お金の貯蔵庫
ステンドグラス
なんとなくキリスト教会?
大空間
中に入ると大きな空間
コーランの棚
コーランの棚
くつろぎ
絨毯に座ってみる
ヨハネの墓
ヨハネの墓
尖塔
モスクに必ずある尖塔

ウマイヤドモスクは,昔のキリスト教会を改造したものらしい。だからどこかしら教会っぽいところがある。でも,中に入ると,女性と男性がまず分けられる。女性は後ろ,男性は前に方の絨毯に座る。絨毯の前には,コーランが入った書棚がある。一面の絨毯…全部で何枚あるのだろう。すごい財産だよ。

びっくりすることに,中にヨハネの墓がある。しかも,それをみんな拝んで帰る。このあたりにも,キリスト教とイスラム教の関係があらわれているような気がする。同根なのだ。



ダマスカス旧市街

オールド・ダマスカス
夕方のオールド・ダマスカス
ランプシェード
ランプシェード
作家
ランプシェードの作家
アラブ風呂
アラブ風呂

夜が更けてきてから,オールド・ダマスカスに入った。道が狭くて,いろんな店がある。風情のある地区だ。不思議なランプシェードを売っている店がった。入ってみたら,手工品だった。金属で縁を作ってガラスをはめ込む。細かい仕事だ。ポートフォリオをだして,これまでの作品を紹介してくれた。

食事の時間が待ち遠しかったのだけど,一度は体験しなきゃと言われて,アラブ風呂に入った。K保田先生,F川さん,T辺先生,K田君と僕の5人。まず中で服を脱いだら腰に布を巻かれる。手にはヤシの繊維を丸めたたわしを持たされる。そのまま風呂に入っていくと最初はスチーム風呂。ここで汗を流す。それから所々にある温水の出る蛇口のまわりで体を洗う。たわしが使っているうちにほどけてくる。どないしたもんじゃろ…と思いつつなんとか終了。

料金は細かく分かれていて,実はフルコースにした。いろいろ加算して220シリポン。日本円で300円ぐらいかな。それには,あかすり,マッサージ,飲み物がついている。洗って待っていると,一人ずつ呼びに来る。別の部屋に行って,指図どおりに寝ころぶと,手際よくあかすりをしてくれる。ほんとに手際よく,あっというまに終わってしまった。その間,下を向けだの横を向けだのいろいろ転がされる。バリウム飲んだ時みたい。

5人が順番にあかすりをしてもらうと,次はマッサージ。担当者は同じなので,待ってたわけだ。これまた別室の台の上に寝ころんで,マッサージを受ける。気持ちいい。でも最後の方で鯖折り状態になったのは何?T辺先生は,ボキッと音がしたらしい。なかなか手洗い。

けっこう楽しんで出てきたら,今度はタオルでぐるぐる巻きにされてベンチに座らされた。そのままの格好でお茶をいただく。シャイというあま〜い紅茶。でも,おいしかった。

アラブ料理の店
アラブ料理の店
クリーム状のなす
クリーム状のなす
生肉
生肉
生レバー
羊の生レバー
不明
なんだかわからん
不明
なんだかわからん

アラブ料理の店に到着。とても有名な店らしい。中も服装コードがありそうな上品さ。Makoがいろいろアラブ料理を頼んでくれた。出てきたものは,なすを潰してクリーム状にしたもの,牛の生肉や羊の生レバー(これ絶品),その他いろんなもの。それらの名前はわからんし,何だったかも記憶にない。食べきれないぐらいあったのは覚えてるけど。

水たばこ
水たばこ
水たばこ
水たばこ

食後には水たばこ!…昔本で読んだりテレビでみたりした,あれ。実際にためしてみた。煙が口の中に来るまでがなかなか難しい。口の中に煙が一杯になると,その香りを感じることができる。それを楽しむものらしい。今回のものはアップルティーの香り。とても良い香りなんだけど,やっぱりたばこなんだな。しかも,体にはあまりよくないらしい。でも,いい経験ができました。


3月13日

朝一に,EDCに言ってヨルダンから来ていたUNRWAの教育省の人たちに,教員コミュニティと,ポートフォリオ,ルーブリックの話をした。先方もいろいろ勉強していることがよくわかる。とても興味を示してくれた。今後,ヨルダンとの関係にも発展したりするかもしれない。

このとき,ハムゼがデ・ボーノの話をしてきた。この人もよく勉強している。Thinking Toolをワークショップに導入してみたのは昨年度の夏だけど,もう実際にいろいろ使いこなしている様子が感じられた。とても熱心な指導者だ。

あわただしい1時間のブリーフィング後は授業参観。LDCのプロジェクトに参加してきた教師の授業を見る。最初はサラファン小学校の数学教師,リン。続いてファルージャ小学校に移動して,英語(教師名わからず)の授業。それから社会科教師ハナーディー。

分数の授業 分数の授業
分数の授業 分数の授業

小学校4年生の算数の授業。通常の授業とはちがって,子どもたちが丸テーブルを囲んで座っている。リンは長方形や円を使って,部分と全体について把握させようとしている。ワークシートも配っているけど,おもしろいのはそれがグループに1枚だけのこと。それを奪うようにして書き込もうとする。発表の時には,OHPを使ってワークシートを映しながらやっていた。

英語の授業 英語の授業
英語の授業

学校の中を怪しい扮装をした子どもがうろうろしていると思ったら,これだった。英語の授業で,買い物をする場面を題材に会話をやる。左下の写真の子どもがひげを描いてるでしょ。買い物場面のスキットモデルとして,生徒の代表が前で演技をする。授業の進行も,子どもたちがやっていく。リトルティーチャーによる授業で,評判がいいらしい。教師役の子どもたちの英語はたいしたものだ。授業もすごいテンポで進んでいく。もっとも,ちょいとシナリオっぽかったのだが。

社会の授業 社会の授業
社会の授業 社会の授業
社会の授業 社会の授業

英語の授業もそうだったのだけど,広めのテーブルの前をあけて8人ぐらいの生徒が囲んで座る。社会科の授業では,まずあちこちの風光明媚な観光地の写真を見る。それからそういったところの環境問題に踏み込んでいって,自分たちのまわりの環境問題について考える。それから,実際に実践しましょうということで,ゴミ箱をもって教室を出て行った。

T辺先生が参観したハナーディーの前日の授業では,コンピュータが壊れて1問1答形式の従来型の授業しかできなかったらしく,今日はそのリベンジだったとか。

子どもたちのグループには,みんな名前がついている。テーブルの上に置いてあるのがそれ。この名前は,実は現イスラエルにあったパレスチナの都市の名前なのだそうだ。

学校の様子

コンピュータ教室
コンピュータ教室
パレスチナの形
パレスチナの形

UNRWAの学校は,情報教育も盛ん…にする方針。したがって,コンピュータ教室もある。このように施設がシリアの学校に比べて充実しているため,シリアからの越境入学希望が多いのだそうだ。それを受け入れていたのだけど,あまりに人数が増えすぎて,3年前から断っているとのこと。このあたりにも,われわれの難民キャンプについてのイメージとのギャップがある。

どの学校にいっても,パレスチナの形があふれている。壁にかけてある絵,授業中につくられたパズルの形(次の授業参照),タペストリーの模様…。あたりまえだけど,ここの人たちは自分の故郷を忘れていないし,忘れないように努力している。故郷を奪われたことがない日本人にとって,どこまで共感できるのか,難しい問題だ。逆にイスラエルの立場にたったときに,どういう感情をもてばいいのかも難しい。どっちかに寄ってしまうと,これまた困った問題が起こりそうだ。ちょっと前の世界の指導者たちから,なんという宿題をわれわれはもらってしまったのだろう。


キャンプの様子
普通の町
普通のビルが並ぶ町
表通り
表通りは商店街
道路横断
道を渡るのは気合いを入れて
煉瓦造りの家
家は煉瓦造り

今ではもう,どこからが難民キャンプかはわからないほど,ダマスカスの町とつながっている。ただ,タクシーは難民キャンプに行くのをあまり喜ばないようだ。それは,交通渋滞があるからで,難民キャンプだからという理由ではないらしい。確かに道は混んでいる。その混んだ車の合間を縫って,道を横断する。この感じはまさに東南アジア。

表通りに面した建物の1階は,ほとんど商店。これだけ商店が並んでいて,いったいどうやって営業が成立するのか,とても不思議。みんなが集まってくる大都会ってわけではない。同じような店もたくさんある。

作りかけのフラット
作りかけのフラット
ごみだらけの道
ゴミだらけの道

裏通りに入ると,作りかけのフラットがたくさんある。たてものはできているし,上の方に人は住んでいる。なぜこうなるかというと,どうやら借りてがついたところから作るかららしい。すごい考え方だ。

裏通りには,ともかくゴミが多い。油断すると,上からいろいろ降ってくる。「ゴミは道に捨てるもの」らしいのだ。掃除の人もまわってくるけど,全然追っつかないということだった。いつかはきれいになるのだろうか。そもそも,きれいにしたいと思っているのだろうか。でも,家の中はきれいにしてるという話だ。これはここの常識か,利己主義か…?


果物屋さん
果物屋さん
雑貨売り
雑貨売り
野菜屋さん
野菜屋さん
ドレス店
ドレス店さん
ケーキ屋さん
ケーキ屋さん
穀物屋さん
穀物屋さん

通りの商店は,基本的に専門店。果物屋あり,野菜屋あり,雑貨屋あり,ドレス屋あり,なんでもある。ケーキ屋もきれいな店をだしている。平たく焼いた菓子が見えていて,これは甘いけどそれなりにおいしい。いろいろな穀物も売っている。手に取っているのは,クスクスのもと。

オート三輪
オート三輪
ミルク売り
ミルク売り

おお,なつかしい。オート三輪ではないか…って僕が知っているのはもっとしっかりしたつくりだったけどね。なんと,ミルクはビニール袋に入れて,馬車で売り歩いている。バンコクでも,ジュースをビニール袋に入れてストローをつっこんで飲んでいる人たちをみるけど,やはり所変われば…である。なんでもあり。



学校訪問の午後,アートマイルプロジェクトに参加していた美術教師のサラームのお宅にお邪魔した。ご主人も芸術家で,いくつかの学校教えているらしい。この方たちはキリスト教で,キリスト教の遺跡のある所の出身だそうだ。そこにあった遺跡のアーチをインテリアにしている。すばらしい家庭環境に,素直な娘さん,息子さんと会えた。いただいたごちそうは,so great。

アーチ
遺跡のアーチのレプリカ
Mako, サラーム,娘さん
サラームたち
息子とT任
息子さんとほたえるT任君
ごちそう
羊の挽肉を塗ったパン

さて,それからが大変。実はもう1件,お呼ばれがあった。フランス語教師のリムの家。そこにいくために,宿のそばからセルビスという乗り合いタクシーに乗る。ところが,目的地が聖地ゴムのそばだというので,そちらにまず立ち寄ることにした。7時までしか入れないということで表からは入れず,T辺先生と出口のような所から行けるところまで行ってみた。かなり奥まで入ることができたけど,中心部にはたどりつけず。

セルビス
セルビス
セルビスの中
セルビスの中

この時期,シーア派のお参りの期間だったらしく,ともかくまわりは黒ずくめの人たちでごったがえしている。うっかりはぐれると,二度と会えない感じ。女性は体を隠していなければ入れないので,Mako,Mikoそれにリンは裏口の外で待っていてくれた。それからがびっくり。Makoがいきなり彫金屋に声をかけて走り込んでいった。知り合いだったそうだ。なんでこんな所に知り合いが…?この人のコネクションは恐ろしい。でも,かみさんに名前を彫ったペンダントを贈ってもらった。Thanks Mako。

ゴムのモスク
ゴムの金色のモスク
尖塔
尖塔
彫金師
彫金師

リムの家には,先にK保田先生たちが来ていた。われわれが着いたのはおそらく8時半ごろ。それから家族,親族の人たちも交えて,大夕食会が始まった。桶をひっくり返したような混ぜご飯にはびっくりした。

夕食
おいしかったスープ
夕食
大量のまぜご飯
3月14日

この日も学校参観。でも,ヤルムークキャンプから出て,車でかなり走ったところにあるバラド・エシェイケ小学校(たぶん)に行った。

クイズ
クイズ
クイズ
クイズ
パレスチナ
パレスチナの形

理科の授業の導入で,クイズのようなことをやっていた。そして,パズルを組み立てると,祖国の形ができあがる。いろいろな所に祖国をイメージさせる教育が盛り込まれている。

いろんな磁石 ワークシート
人形劇 磁石でクリップを動かす

理科の授業は,磁石がテーマ。磁石がどんな作用をもっているのかを実験をしながら学んでいく。途中で人形劇が入ったり(ただし何をやってたのかは不明)…。子どもたちも,淡々と実験をしていた。ここにもちょっとシナリオを感じてしまう。

好きな形を切り抜く グループ学習
笑顔 まとめ

次はフランス語の授業。部分冠詞っちゅうのをやっていたのではないかと思う。なんといってもフランス語は全くだめなので。そのため,身の回りのものの絵を描いてきて,それを切り取るところから始まる。そしてそれを使ってグループ学習。発表したものをホワイトボードを使ってまとめる。それぞれについて,パワーポイントが準備してあって,見せながら授業していた。

ただ,切り取ったりする時間がもったいない。はじめから切って持ってくるとかすればいいのにね。それでも,生徒のやる気を引き出すという目的にはそっているのでしょう。

授業参観はこれで終わり。そのあと,何をしたのだかあまり覚えていない。夕方,フラットに戻って,明日のアートマイルプロジェクトのパーティーのために,寿司を作った。野菜を買いに行って,大量のにんじんを短冊切りにし,出汁醤油で煮込む。そのあたりで,シリアでの生活を支えてくれているMakoの友人,カリームが来てくれて,カシオン山に連れて行ってくれるとのこと。乗せてもらった。カシオン山とは,カインとアベルの伝説の山。中腹からの景色がよくて,たくさん見物客が来る。そのためのレストランも軒を並べる。デザートだけとって,みんなで食べた。…帰ったらお寿司ができていた。Thanks T辺先生,Miko。

カシオン山からの夜景
カシオン山のレストランからの夜景

デザート類
レストランのデザート
パフェ
めずらしく食べたデザート

グループ写真
カリーム,僕,T任,K田(撮影:Mako)
3月15日

最終日。午前中は,サラファン小学校の隣の学校で,アートマイルプロジェクトのパーティが開催された。これに関わった6名の教師を招き,子どもや保護者にも来てもらった。シリア側からは,子どもたちの音楽の演奏もあって,とてもよく準備されていた。

楽隊
トルコの楽器で演奏してくれた
作品展示
アートマイルの作品を飾る
国枝大師
シリア大使の国枝さんも来場
UNRWA教育省のドン,アブアーデルと絵の説明を聞いてくれる
いい笑顔
子どもたちとMiko

パーティは大成功。このプロジェクトをずっと写真に記録してくれたI藤さん(協力隊)がスライドショーを流し,みんなでプロジェクトを振り返った。シリアの国枝大師も来場され,UNRWA教育省のアブアーデルと一つ一つ絵を回ってくれた。このプロジェクト,よくここまで育ったものだ。参加したシリア,日本の先生達にS飽さんとそれぞれの子どもたち,それに本当に頑張ったうちの学生くん,ご苦労様。

帰路

難民キャンプは,一人で公共交通機関を使うのでは行けもしないし帰れもしない。帰りの便は,K保田先生が16時ごろ。僕のが16時50分。若干ちがうので,K保田先生は先にタクシーで出発。僕はハムゼが手配してくれたEDCの車で出発した。

空港には難なく到着。しかし,空港に行ってみてびっくり。真っ黒な装束の人たちであふれている。ともかくまったく動かない。エミレーツのカウンタははるか向こう。みんなそこに並んでいるらしいのでしょうがないから待つ。

問題なのは,いくら待っても列が動かないこと。2時間以上の余裕はあったのに,待っている間にもう16時50分。どないなるねん…。一人だからトイレにも行けない。

巡礼の人たちの特徴は,人数が多いこと。10人とか20人で並んでいる。お年を召した女性たちは床に座って,男どもは航空券の束をわしづかみにして並んでいる。まわりには,家財道具一式あるのかというような荷物の山。これ,乗れるの…?

カウンターでは,一度の大量のチケットを渡すので処理に時間がかかるのだろう。それにしても早くから並んでいる割には列が進まないと思ったら,どうもどんどん横から入っているらしい。これはまじめにならんでいたら損だとふんで,外側にまわってみた。それでもなかなか進まない。ようやくいけそうかな〜と思ったころには,もう最後の20組みぐらいになっていた。どうも変だ。

それでも,やっとチェックイン終了。時間は17時20分。あわてて出国すると,フライトの時間が17時50分に伸びていた。よかった。

座った席は,真ん中シート。出口側に小太りのイスラム教徒が座る。しかし,こいつなかなか質が悪い。大声でまわりの人たちと話すは,通路を挟んだ斜め前の白人女性に声をかけるは,こっちを向いて「彼女はHotじゃねえか」なんて話しかけてくるわ。ドバイに着くまでずっとしゃべっていた。ついでに言うと,つれのおばあさまが,機内で突然歌い出した。これにはそいつも制止にかかった。すごい人たちだ。でも,この人達,英語で会話してたんだけど,どこから来たのだろう?

降りるときになってまたびっくり。そこら中の毛布をカバンに入れ始めた。「おまえは持って帰らないのか」とまで言われるし…。まあ,おかげで飽きない機内だったけど。

ドバイでは,もう一度日本行きにチェックインする。カウンターに行ったら,今度は前に韓国人が一人。すむのを待って真後ろに並んでいた。順番が来ると,いきなり右斜め後ろから手が出て,チケットを係に渡す。受け取るなよ!

そう,この人も大量にチケットを持ってる口だったのです。なので,1人ぐらいの順番抜かしはしゃあないか…などと思ってはいけないのです。これで一度に10人に抜かされたことになるんですね。なんとモラルのない人たちか!

今度は抜かされないようにブロックしながら並んで,ようやくチェックイン。僕の手続きをやっている間にも,両側からチケットが出てくる有様。すごかった。後日,これはモラルがないという問題なのではなく,そういうルールなのだとK保田先生に教わり,納得…するわけないね。

まだまだ異文化ってあるのが分かった旅行でした。